第二章 特徴

勝つために有効な方法は常に相手の意表をつくことであり、解り易く言えば、三次元空手・玄制流の基本原理はこの一点を徹底的に追及したところにある。それをどうやって型の中に表現するか、そしてそれらの技を如何にして実用化するかという研究の末、祝嶺正献がたどりつき創作した技法原理が、施・運・変・捻・転ということであった−−。


その1 『下から崩していく!』

玄制流の攻撃の特徴。それは『下から下から』攻めていくということだ。
人間は足を土台として立つ。ゆえにその下半身を攻撃すれば、自然と上体が崩れ、ひいては相手全体をも封じることができるのだ。(イラスト参照・達磨落し)
また、下段の攻撃は中段の攻撃よりも比較的簡単といえる。
足を上げないで、初心者でも体が安定し、威力が出せる。また、モーションが少なく、距離が接近しているため、上達者でも比較的受けにくい。玄制流では普段の稽古からこの下段の攻撃を重視している。(写真1・2)

上を攻めると逃げられるが、下を叩くと崩れる。

下段攻撃の簡単な実例。中段攻撃には多くの人が反応するが、下段は視界の問題もあり、なかなか反応しにくい。


その2 『旋・運・変・捻・転』

玄制では技の中核となる5つの身体動作がこの『旋・運・変・捻・転』だ。簡単に言えば、玄制流の技はこの5つの法則によって作られている。
比較的組手でもよく使えるのが旋・運・変・捻だという。体軸
(脊柱軸)を変化させ、体を移動させることで攻・反撃を行うのだ。この独特の体軸を中心とする体捌き『旋・運・変・捻・転』により、体格や力を越えた技が繰り出せるのだ。

1 旋

縦軸の回転。一言で言えば玩具のコマの動き。体軸を高い場所から、低い場所へと下りる重力を伴いながら、回転する。
2 運

前後上下の昇降運動。体軸を上下に波のように移動させることにある。
3 変

体軸を様々な方向に倒し、主に蹴り技を伴う動き。倒れるように身体を床面に倒すことから始まる。
4 捻

体を斜めに捻る運動 ボールを投げる動きなど想像すると分かりやすい。
5 転

前後左右に転がっていく運動。放物線を描きながら弾むボールの動きに似ている。前転、側転、宙転などの床運動の動きがそれに当たる。

◎3次元とは?

3次元とは一体なんでしょうか? 簡単な説明をします。
私たちの住んでいる世界は、三次元です(一次元の線を書けば、インクの幅や高さも
存在するので、結果的に三次元になってしまいます)。この特集では、その高低差が他の流派よりも際立つために、『三次元』という言葉を用いました。
一次元=点の連続からなる直線の世界
二次元=縦と横の世界=面
三次元=縦、横、高さ=立体の形状(三次元空間に現存の地球等)