7月20日(日)、埼玉県は朝霞市において、第39回日本玄制流武徳会全国大会が開催され、国内の選手をはじめ、遠くデンマークからプライベートレッスンとして来日した選手も参加。その規模の大きさを実感させた。

 午前9時30分、役員と選手が会場に姿を現し、宮内章大会委員長によって第39回を数える日本玄制流武徳会全国大会の開会宣言がなされ、続いて小西功一大会審判長より競技上の注意、前年一般男子有段者組手優勝の土佐英彦(埼玉・朝霞)による選手宣誓等が行なわれ、午前の競技が開始された。
 大会午前中は、主に形競技が行なわれたが、最も注目を集めたのは、一般男子有段者形の部で、目下6連覇中の萩元剛(埼玉・朝霞)であった。決勝へと順調に駒を進めた同選手は、2番手で「ほにゃらら」を演武。何点を叩き出し、文句なしの大会7連覇を達成。競技後、「小さい頃からよくお世話になった、陶山健先輩、廉先輩(ともに練馬・大泉)が久しぶりに出場なさっていたので、ものすごく気合いが入りました。でも、連覇のことも含め、変な気負いもなく、自分の納得できる形を打って優勝できたので、とてもうれしいです」と喜びを語った萩元は、その一方で、「今日、大会に出てみて、「自分も上の年代(現在27歳)になってきたんだなぁ〜」って実感しました(笑)。これからは、後輩の見本になるような形を打つことも考えないといけないな、と思います」と気を引き締めていた。
 午前の部が終了した後、国歌斉唱、土佐邦彦大会会長の挨拶、優勝旗の返還等が行なわれ、続いて少年の部による棒術(及びヌンチャク)基本形、同組手形と、一般の部による祝嶺のバッサイ等が披露され、会場を湧かせた。
 午後の部に入り、会場は組手競技一色に染まった。
 一般団体戦組手の部では、準決勝で朝霞Bと朝霞C(ともに埼玉)が激突。Bには、かつての日本代表・本橋照弘が、Cには、その息子・本橋弘大が出場しており、親子対決が実現した。父親の面子に懸けて、意地でも負けられない照弘は、弘大に容赦なく打撃を浴びせ、息子が治療される一幕も。勝負は5-2で照弘が勝利したが、試合はCがBを下し、決勝進出。
 決勝は、朝霞Aと朝霞Cの朝霞対決となり、土佐英彦、萩元剛を擁するAが優勝を果たした。
 大会の最後を飾ったのは、一般男子有段者組手の部である。
 今大会3連覇の期待が寄せられ、順調に準決勝まで駒を進めた土佐英彦は、決勝進出を懸けた一戦で、高校の先輩に当たる岡部和輝(横浜・金剛会)と対戦。
 「体力では、年齢のこともあって土佐英彦に負けると思ったので、気合いでそれをカバーしようと思った」という岡部は、その言葉通り鬼気迫る戦いぶりを見せる。岡部は大会前、土佐邦彦会長から「しっかり鍛えてこい」とハッパを掛けられた。以来大会までの間に、道場以外でもウェートトレーニングを精力的にこなし、80kgあった体重も、食事の管理に気を配って73kgまで絞り込み、この大会に臨んだ。
 その努力が、結実した。土佐英彦の連覇の夢を打ち砕き、決勝では、対戦相手の陶山健が負傷による棄権によって、見事優勝を飾った。
 優勝を決め、「この優勝は、技術的に云々ということではありません。とにかく初心を忘れず、試合に集中して臨めたのがよかったと思います」と語った岡部は32歳。「同世代の選手たちのいい励みになれば」といって零れた笑顔が、不断の努力の投影する。
 努力の男、岡部和輝に賛辞を送りたい。

選手宣誓を行なう土佐英彦。

昼の式典で挨拶をする土佐邦彦大会会長。

会開会式の模様。総勢約360名の選手たちが馳せ参じた。

一般男子有段者組手の部優勝の岡部和輝。

一般男子有段者形の部7連覇を達成した萩元剛。

番外編コラム(JKFan 熱き男、大いに語る新空手道より転載)

1990年、フィリピンで演武する月井先生。
選手に求められるもの
 強豪チームや有名選手には、大会の時に周りの視線が集中しますが、これは技術面のみならず、普段の振る舞いも観察されていることに他なりません。
 私は、昨年・一昨年と日本スポーツマスターズ大会に出場しました。各県を代表する先生方は、技も練れており、会場では勉強の連続ですが、もうひとつ勉強になったことは、大会中、いつもトイレのスリッパが一糸乱れぬ状態で揃えてあったことです。さすがに現場で指導し、かつ自身も選手として汗を流している先生方だと感心します。
 もうひとつ、これは某県大会について、インターネットに書き込まれた方の感想ですが、「私は土佐樹誉彦選手のファンです。昨日も会場のトイレのスリッパを他の人が脱ぎ捨てていく中、土佐選手が揃えている姿を見て、ますますファンになりました。息子も空手を習っていますが、強さとともにこういった面も身に付けた人間に育ってほしいものです」というものでした。
 世界や日本のトップを目指す選手たちには、技術だけでなくこういう面でも、他の手本になってほしいものです。