世の中には、様々な子供がいる。様々な場面で頑張って、皆を感動させる子供がいれば、自分中心で犯罪に走る子供もいる。違いはどこにあるのか。育つ環境からきているとしか思えない。しかし、子供が一歳なら、育てる親だって一歳である。親はいかなる意識を持って、どのように子供を育てれば、よいのであろうか。一度間違ったらやり直しできない子育てだけに経験者の話に耳を傾けてみよう。空手界のご意見番・土佐邦彦氏に、子育てについて話を聞いた。



 1932年(昭和7年)、広島県広島市生まれ。幼少の頃から剣道5段、柔道3段を有する警察官の父より、厳しい教育を受け、成長。自分の決めたことをやり遂げる、妥協しない、という現在の言動の基本が養われる。15歳で単身上京した後、自衛隊に入隊。そこで、故・祝嶺制献と出会い、師事。ともに玄制流の礎となる形を創造する。その後、日本空手道玄制流を引き継ぐとともに、(財)全日本空手道連盟、(社)東京都空手道連盟の要職を歴任。空手道の普及に努める。現在、日本空手道玄制流武徳会会長主席師範。息子である樹誉彦氏も、全空連ナショナルチームに在籍し、国内外を問わず、数多くの大会で活躍している。

 



「子供を育てる7ヶ条」というテーマを頂いた。子育てというのは、考えてみれば、これ程の大事業は他にないのではと思う。
 なぜなら、その育て方によっては、極端な言い方をすれば、この日本という国が無くなるかも知れないからである。
 私はかつて、本誌の1988年5月号の「青少年による凶悪犯罪多発時代、世紀末日本を空手が救う」というタイトルの特集の中で、一文を求められ、神戸の酒鬼薔薇聖斗(すでに20歳とのこと)、栃木県黒磯市の女性教師刺殺事件等にふれ、少年育成のために、今こそ武道、スポーツによる、人格陶冶の有効性が重要視されるべきであると説いた。
 しかし、その後も同種の事件は跡を絶たず、更には、親自身や保育関係者による児童虐待の相談が、平成13年度で24,792件を数え、これは前年度の約1.3倍に当たるとのこと(厚生省まとめ)(平成14年6月12日付・産経新聞)。
 子供は生むが、きちんと育てる能力のない親が増えているということであり、子供が親を選べない以上、誠に憂うべき事態と言わねばならない。何故こういう現象が起きたのか。
 世の所謂識者によって、様々な理由が挙げられている。ひとつには、昔と違って多くが核家族化することで、両親を含め、子育てについての先人の知恵を借りることもなく、又、物理的な協力を得られず、未経験のまま、手探りで子育てをしているケースが多いことも一因ではあろう。
 しかしとにかく、子育てのやり直しは絶対にできない。文字通りの一回こっきりである。世の親たるものは、そのことを自覚し、その子育てに無限の責任を持って頂きたい。
 何故ならば、その育て方の如何によって、可愛いあなたの子供の将来が決まってしまうからである。
 その意味で、今回のこの企画は、改めて我が身を振り返り、我が子育てをもう一度じっくり考えて見る良い機会を与えてくれたものと考えている。