プロフェッサー・杉田が簡単解説!20分で組手15の苦手を克服!

杉田隆二という男がいる 26歳で第6回全空連全日本(L級)を制覇。 野性味溢れる風貌に似合わず(?)、理論肌で理系の視点から、独自の空手理論を展開する人物である。 月刊空手道では早くから注目し、最近では2004年7月&9月号、2007年2&3月号で特集を組んできた。 無論、多くの読者から反響があり、好評を得た。 しかし少数意見ではあるが「難しすぎて、よく理解できなかった」という意見もあった。 事実、編集部もプロフェッサー・杉田が発する言葉(数式も含む)が理解不能な時もある。 そこで、杉田氏こうお願いしてみた。 「中学生にも分かるように説明してもらえないですか?20分で効果が上がって、しかも初心者が読みやすいように、1ページで問題が解決する感じで・・・」 ダメもとであったが、杉田氏はこれを快諾。15の悩みをほぼ3ステップで解決する原稿を完成させた。 しかし、初心者向けとはいえ、その背後に潜むものを読み解く力を持った熟練者ならば、高度な答えが浮き上がってくる。では早速、プロフェッサー・杉田が提唱するステップ3理論にチャレンジしていこう!

杉田隆二(すぎた りゅうじ)
昭和27年東京都出身。小さい頃は病弱であったが、父の勧めで10歳の頃から講道館柔道に入門。18歳の頃、日本空手道玄制流武徳会に入門。卓越した土佐邦彦氏の指導により、才能を開花させ、26歳のときに第6回全空連全日本(L級)を制覇。理論肌で理系の視点から、空手を研究。全日本空手道連盟教士6段・国際玄制流空手道連盟 武徳会7段・日本体育協会公認空手道上級コーチ・全国組手審判員。 182センチ、89キロ。


1.上段突きを磨く!

空手競技には欠かすことのできない上段突き。今まで出しても極まらなかったアナタの突きをプロフェッサー・杉田が3ステップで変えてみせる!

ステップ1 顎をなでる練習

相手を好きな人とイメージ。顎をなでるように入る(写真1〜3参照)
大好きな相手を思うのだから、優しくなでること。
「掌が上を向いているため、脇が開かない(写真4参照)
また優しくなでると、写真5のように後ろ足で蹴って入らなくなる (膝の抜き中心)。
無駄な動作=腕を引いてから、前に出ようとする予備動作(写真6〜7参照) も自然と消えていきます」(杉田)

写真1 写真2 写真3

写真4 写真5

写真6 写真7

ステップ2 掌→拳に変える

相手の反応が遅れてくるのが実感できたら、なでる手を拳に変え、突いてみよう(写真8〜10参照)
この時、腕の力をいれないように。中丹田から腕が始まっている感覚を持つ (写真11参照)
「あくまでも、好きな人の顎をなでるように腕を伸ばすこと。
相手の顔に手が届く瞬問、手を捻って(写真12〜13参照)、 間合い等をコントロールしましょう。写真14は逆突きの例です」(杉田)

写真8 写真9 写真10

写真11

写真12 写真13 写真14

ステップ3 重力を使った引き手

拳を引く時は、重力を使って、肘を下に落とすように引く(写真15〜16参照)
「この時、手の甲が下に向くように引く(=中丹田から引き手を取ることが楽になります)。
また手の甲が下に向いている方が、肩甲骨が締まりやすくなり(写真17〜18参照)、結果的に素早い引き手となります」(杉田)

写真15 写真16 写真17 写真18

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2.中段突きをレベルアップ

続いて、数多くの勝敗を分けてきた技・中段突きのコツを教えてもらうことにしよう!

ステップ1 壊れやすい物をキャッチ

まず二人組となり、約1メートルの距離を取る(写真19参照)
次に自分の頭の上の高さくらいから、ピンポン玉のような物を落としてもらい 、それを受取る(写真20〜21参照)
「ピンポン玉のような物は、大好きな人から貰った壊れやすい大事な物とイメージすること。
慣れてくると、後ろ足で蹴って跳び込もうという感じからら(写真22参照)、膝の脱力を使う感じになってきます。
掌が上を向いているから、脇も絶対に空きません」(杉田)

写真19 写真20 写真21

写真22

ステップ2 拳サポーターを拾う

まず相手の帯の結び目の上に拳サポーターを置き、立ってもらう(写真23参照)
次に手を相手に向かって出す(写真24〜25参照)
この時、掌の部分を用い、拳サポーターを拾うような気持ちで出し、触る瞬間に拳を捻って、突きへと変える(写真26〜27参照)
「試合でもそうですが、中段はある程度当てないと、技として見てくれない。
拳サポーターを拾う気持ちで動作することで、コントロールが自在となります」(杉田)

写真23 写真24 写真25

写真26 写真27

ステップ3 重力を用いて引く

引く時は、基本的には上段突きと同じ。
重力を使い、肘を下に落とす(写真28〜29参照) &掌が上を向くように拳を引くこと(写真30参照)
「突いた時に大事な物を受け取ったのだから、それを相手に奪い返されないように、突いた手(=大切な物を持った手)を相手から遠い位置へと運ぶことが大切です。
つまり、突いた側の体は、後ろへと素早く引き、反対の手(身体)は相手を止めるように前に出すのです(写真31参照)
これにより、相手の反撃を受けにくくなります」(杉田)

写真28 写真29 写真30

写真31

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3.前蹴りをパワーアップ

今度は蹴りだ。3&4ではプロフェッサー・杉田ならではの面白い表現(?)が飛び出した。

ステップ1 まずは脱力のイメージ

右足で蹴る場合、足を肩幅ぐらいに開き、前後に一足長より、多少狭めで立つ。
次に左足に体重をほとんどかけ、左脚(膝) の脱力を行なう(写真32〜33参照)
この時に、右脚が浮く、あるいは軽くなるイメージを持つ。

写真32 写真33

ステップ2 骨盤をスライドさせる

“右脚が浮く”イメージができたら、蹴ってみよう(写真34〜36参照)
蹴る時のイメージ=ただ骨盤をスライドさせるだけでよい。右足の力もいらない(=蹴る方の足の力もいらない)。
感覚が掴めたら、この蹴り方で実際にキックミット、あるいはサンドバックを蹴ってみる(写真37参照)
「キックミット類が上手く蹴れない人は、蹴りの形ができていない可能性があります。
基本動作=(1)で膝を上げ(写真38参照)、(2)で脚を伸ばす&上足底をきちんと出し(写真39参照)、(3)で脚を引き(写真40参照)、下ろす―――をもう一度確認して下さい」(杉田)

写真34 写真35 写真36 写真37

写真38 写真39 写真40

ステップ3 汚物を擦りつける?

蹴りを極める瞬間と、引く時のイメージは次の通り。
「蹴る目標へ上足底に着いた汚い物(泥や踏んでしまった犬の糞を想像!)を、上から下へ塗りつけるようにして下さい(写真41〜42参照)
これが蹴り足を速く&遠くに出そうとする動作へと繋がっていきます。
その結果、下から蹴り上げなくなり(写真43〜44参照)、相手の肘や腰骨等を蹴っても、突き指をしなくなります。
重力も使えて(写真45〜47参照)、より速い引き足がとれるようになります」(杉田)

写真41 写真42

写真43 写真44

写真45 写真46 写真47

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4.抜いて浮きながら廻し蹴り

試合で最も使われる蹴り技=廻し蹴りだ。どうすれば、動きを読まれずに相手に蹴りを極めることができるのだろうか?

ステップ1 犬が小便をした形

まず前蹴りと同様、軸足(膝)の脱力により、蹴り足が浮く感覚を掴む(写真48〜49参照)
次に浮いた瞬間、写真50〜52のように軸足の踵が相手に向くぐらいまで方向を変える。最初は蹴りを意識しないこと。
「蹴り足の動き始めは、力も抜けているはず。ゆえに前蹴りと同様、足が下で膝が上となって、相手に向かって行く感じとなります。
また軸足の方向を瞬時に180度近く変えるため、蹴り足には外側に向かう力が働きます。
つまり、蹴り足の膝も外側に振られるため、最後は犬が小便をしたような形となるはずです」(杉田)

写真48 写真49 写真50 写真51 写真52

ステップ2 フラダンスでスライド

ステップ1の形が、力まずにできたら、実際に蹴ってみよう(写真53〜54参照)
その際、軸足の方向を変えた瞬間、蹴り足を伸ばすこと。
さらに腰はフラダンスのように横にスライドさせる&相手にお尻の穴を見せるような気持ちで蹴る。(上段の廻し蹴り、裏廻し蹴りを使うには、力を抜いて、股関節を開く必要がある=柔軟性も必要不可欠)。
「蹴る時に腕を振り、インパクトの瞬間、上体を捻る蹴り方をしている人がいますが(写真55参照)、腰に負担がかかり、腰痛の原因になるので注意しましょう」(杉田)
では、実際にどのように蹴ればいいのか?
「脛で前から蹴る感覚です。ここでしっかりとキックミット等を蹴り(写真56〜57参照)、感覚を養って下さい」(杉田)

写真53 写真54 写真55

写真56 写真57

ステップ3 足は遠くヘ

蹴り足をなるべく遠くへ伸ばすこと。
蹴り足を遠くへ伸ばすように蹴ると(写真58参照)、伸び切った身体は戻ろうとする。その力を利用すれば 、引き足も自然と取れるようになる(写真59〜62参照)
「裏回し蹴りも、足裏を遠くに身体を伸ばす感覚で行うと楽にできます(写真63〜64参照)
実際に倒す場合、廻し蹴りは上足底、裏回しは踵で蹴る。
しかし、競技では相手を倒してしまうと、反則になるため、廻し蹴りは足甲、あるいは脛。裏回し蹴りは、足の裏で蹴る方が実用的です」(杉田)

写真58

写真59 写真60 写真61 写真62

写真63 写真64

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5.動きながらの突き・蹴り

闇雲に攻撃しても当たらないのは当然。どうすれば、動きながら的確に突き・蹴りを極めることができるのだろうか? 次の3ステップで克服のきっかけを掴もう。

ステップ1 順&逆突き(単発)

まずは前足が出すと同時に前手で突く(= 一般的な順突き/写真65〜69参照)
次は前足を出すと同時に後ろの手で突く(= 一般的な逆突き/写真70〜73参照)
「慣れてきたら、体の奥深くを意識して、攻撃時の姿勢・バランス、タイミングなどを磨いていこう。安定した姿勢・緊張と脱力などの関係が見えてくるはずです」(杉田)

写真65 写真66 写真67 写真68 写真69

写真70 写真71 写真72 写真73

ステップ2 体軸、下丹田の位置

前足をあらかじめ出して(写真74参照)、後ろ足を引きつけると同時に前手で突く(=前手の順突き/写真75〜77参照)。
次に同様の足の動きから、後ろの手で突く(=逆突き/写真78〜81参照)
「自分の身体(体軸、下丹田)を、前足を動かずに、突き蹴りが届く位置まで(写真82参照)、近づけることを学んで下さい」(杉田)

写真74

写真75 写真76 写真77

写真78 写真79 写真80 写真81 写真82

ステップ3 蹴り技(単発)

ステップ1&2の入り方で蹴りを出す。
ステップ1の入り方で前足を出す時、前足の力を抜くことができたら、前足の蹴りに変化できる(写真83〜85参照)
ステップ2の入り方で、後ろ足を引き付ける時、浮く感覚があれば、後ろ足の蹴りを変化させることができる(写真86〜88参照)
「もちろん、前蹴りだけでなく廻し蹴り、裏廻しにも変化できます(写真89〜90はステップ1の入り方で廻し蹴り)。 余力のある人はぜひチャレンジしてみて下さい」(杉田)

写真83 写真84 写真85

写真86 写真87 写真88

写真89 写真90

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6.動きを盗む体の使い方

どんなに突き・蹴りが遅くても、相手に気がつかれなければ速いことになる。年を重ねた方必見の“動きを盗む”体の使い方のコツを教えてもらった。

ステップ1 骨盤のスライド

前の骨盤を前にスライドさせながら(写真91〜92参照)、自分の手が届く間合いで突きを出す(写真93〜94参照)
「自分の身体(体軸、下丹田)が突き蹴りの届くところまで近づけばよい(5ーステップ2参照)。前足を動かさないで、自分の身体を相手に近づけること(写真95参照)がポイントとなります」(杉田)
またこの際、左の膝頭が多少外に曲がった方が、骨盤をスライドさせやすいそうだ。
「骨盤をスライドさせる時の足の開き具合(外)は、膝の曲がる角度によって違います(個人差がある)。
膝が外に曲がるタイプ(写真96〜97参照)。膝が内に出がるタイプ(写真98参照)。真っ直ぐなタイプ(写真99参照)があります。
股関節が開いて、骨盤をスライドさせるには、外に曲がるタイプ→真っ直ぐなタイプ→膝が内に曲がるタイプの順番に足を外に開く必要があります」(杉田)

写真91 写真92

写真93 写真94

写真95

写真96 写真97 写真98 写真99

ステップ2 前&後ろ脚の脱力

前足を出し、着地したと同時に(写真100〜102参照)、前膝の力を抜いて、骨盤を相手にぶつけるようなイメージで、突き・蹴りを出す(写真103〜105参照)
「つまり、次の二つの体の使い方を続けて行なうのです。
  (1)主に後ろ脚の脱力によって、前足を出す(ここでは写真106〜108参照)
  (2)主に前脚の脱力によって、後ろ足を引き寄せる動作(写真109〜112参照)
骨盤のスライド、膝の抜きや脱力ができれば、速さの質が変わってきます。
上体は技を出す瞬間まで動かさないことが肝心です」(杉田)

写真100 写真101 写真102

写真103 写真104 写真105

写真106 写真107 写真108

写真109 写真110 写真111 写真112

ステップ3 複合的な身体の使い方

ステップ2を一瞬で行う(写真113〜118参照)
「(1)後ろ脚の脱力によって、前足を出す→(2)前脚の脱力によって、後ろ足を引き寄せる動作の感覚をなるべく短くします。間を抜かれないように心がけて下さい。
また、上体を動かさないなど、相手に察知されない工夫を忘れずに!
慣れてきたら、この動きを連続で続けられるよう練習して下さい」(杉田)

写真113 写真114 写真115 写真116 写真117 写真118

ウェイトトレーニングも大好きな杉田先生。「脊椎間狭窄症の手術を受けて間もないので、見本になるような動き、特に背筋に負担がかかるような蹴りはできないかもしれませんが、がんばります」と語る気さくな先生である。

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7.コンビネーションのコツ

一発で相手をしとめるのは難しい。そんな場合はコンビネーションが求められる。しかし、ありきたりのワン・ツーじゃ返り討ちに合うだけ。杉田氏が現役時代に使っていた。“相手の反応が遅れやすい”コンビネーションを紹介していこう。

ステップ1 前手の逆突き

はじめに後ろ脚の脱力によって、前足を浮かせる感覚となり、前足を出す(写真119〜120参照)
次に前足が着いたら脱力させ、骨盤をぶつけるようにして、前拳で突く(写真121〜122参照)。前手は出すまで、動かさないことがポイント。
引き手は逆突きのような形になる(写真123参照)
「普通、この入り方では後ろの拳で突くが、より相手に近い前手で突けば、大変受けにくい技となります。
しかし、突きが弱く見えやすいので、くれぐれも突き手の捻りを忘れず行なって下さい」(杉田)

写真119 写真120

写真121 写真122

写真123

ステップ2 三連突き

前足を出すと同時に、前の突き(一発目)を出す(写真124〜126参照)
次に前足が着地した瞬間、前脚(膝)の脱力により、骨盤を相手にぶつけるように&身体を投げ出す感じで後ろの突き(二発目)を出す(写真127参照)
そして、前手を相手の反撃に備える気持ちで出し(写真128参照)、後ろ足が軸脚の前足を追い越した瞬間、後ろの突き(三発目)を極める(写真129参照)
反撃してこない相手であれば、反撃に備えている手を突きに変えて、四連突きにしても良い。

写真124 写真125 写真126

写真127 写真128 写真129

ステップ3 蹴りに見せた追い突き

後ろの上段突きを出すようなイメージを持ち、後ろ足が浮いた時に膝を上げ(写真130〜132参照)、後ろの突きを極める(写真133参照)
この時、膝を高く(自分の水月より高め)上げることが重要である。これにより、相手は蹴りと勘違いしやすく、また自分の中段のブロックにもなる。
「今まで紹介してきたコツを組み合わせて、自分自身にあったコンビネーションを開発して下さい」(杉田)

写真130 写真131 写真132 写真133

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8.カウンターの練習法(1)

相手の力を利用するカウンター・テクニック。どうすれば、この必殺テクニックをマスターすることができるのか? カウンターの感覚を三段階で伝授していこう。

ステップ1 ボールをキャッチ

追い突きを中段へ押し込むように突いてもらう(写真134参照)
「恐怖感を抱くと、カウンターは成功しないので、最初はゆっくり行いましょう」(杉田)
次に相手の拳をボールのようにキャッチする(写真135〜136参照)。壊れやすい物を丁寧に受取るイメージ。
「この時、相手の手に衝撃が返るようではいけません」(杉田)

写真134 写真135 写真136

ステップ2 相手を嫌うな

外から見た動作は、ステップ1と同様であるが、相手の体軸(下丹田)を意識し、それを受取る感覚で行なう(写真137〜139参照)
今度は、相手との距離がぐっと近づくはず。
そして相手の拳は、写真140〜141の如く受け流されるように自分の身体の後ろへ逸れていくこととなる。
「感覚がよく分からない人のために補足しておきましょう。
ボールを受け取る時は、まず手を前へ出した後、ショックを吸収するように受取るはず(写真142〜143参照)
相手の身体(体軸、下丹田、中丹田)を受け取る時も、自分の手が届く少し前から受取り始めるイメージで出て(相手が自分のバリアに入る時)、最終的には相手にキスでもできるぐらい近づく(前出の写真140参照)。
相手を嫌うのではなく、好きな人を受け止める感じで行なえば、それが可能となるはずです」(杉田)

写真137 写真138 写真139

写真140 写真141

写真142 写真143

ステップ3 他の技も試してみる

中段の追い突きに対して、前出の動作ができるようになったら、より恐怖感を持ちやすい上段の突きにチャレンジ(写真144〜147参照)
「できるようになったら、蹴りや逆突きにも取り組んでみましょう。
相手の軸(下丹田、中丹田)を受取るイメージで行なうと、それほど恐怖感を持たないですみます」(杉田)

写真144 写真145 写真146 写真147

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9.カウンターの練習法(2)

カウンターの感覚が身に付いたら、実際にカウンターを打ってみよう。

ステップ1 VS追い突き

まず追い突きに対して、カウンターを行なう。
相手の身体を受取る感覚で前に出ながら(写真148〜149参照)、相手の拳を前手を用いて前から後ろへ受け流して突く(写真150参照)
この時に狙う場所は、相手の胸骨(写真151参照)。中段突きは、相手の中丹田の高さ=胸骨付近と、下丹田の高さ=帯の高さが入りやすい。
「相手が逆体でしたら、受けながら前に出て、外を取るように突く(写真152〜153参照)。身体が半分ずれ、自然と攻撃をかわすことになります。
外を取らせてくれなかったら、後ろの手で相手の正中線を取りましょう(写真154〜155参照)
帯辺りを突く時は、上から下&中段突きの項で述べたことを忘れずに」(杉田)

写真148 写真149 写真150

写真151 写真152 写真153

写真154 写真155

ステップ2 狙う場所の秘伝

ステップ1ができたら、狙う場所を変えてみよう(写真156〜159参照)
上段突きは、相手の顔に届く瞬間に拳を捻って、距離をコントロールすること。
「この時も、相手にキスをするような気持ちで身体を寄せる(写真160〜163参照)
相手を嫌って、顔を遠ざけると、良いカウンターは打てません」(杉田)

写真156 写真157 写真158 写真159

写真160 写真161 写真162 写真163

ステップ3 VS様々な攻撃

様々な攻撃に対し、カウンターを放つ(写真164〜166参照)
相手の身体(下丹田)を受取る感覚ができていれば、いかなる攻撃にも対応できるはず。
逆に無理に相手の攻撃を止めると(写真167参照)、相手は次の一撃を放ってくるので、受け流す意識を忘れずに。
「繰り返しとなりますが、攻撃に逆らうことなく受け取るイメージができていれば、相手の二発目の攻撃も遅れがちとなります。
そうすれば、相手の一本目と二本目の攻撃の間にカウンターを入れること(前出の写真161〜162参照)も可能となります」(杉田

写真164 写真165 写真166

写真167

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10.意識しないが大切な呼吸

人間は呼吸なしでは生きられない。その呼吸を空手にどう活かせばよいのだろうか?

ステップ1 基本的には気にしない

「私自身、呼吸は普段から腹式で深く行うようにしていますが、基本的には気にしていません。
自然のままが、最も相手に悟られにくいと思うからです。
息を吐くときは、力を入れる=止めるとき。息を吸うときは、力を抜く時の場合が多い。間合いを詰める時も私は息を吸いながら近付いています(写真168参照)
息を止めるのは、居着きを生む原因ともなるので、良くないことと考えましょう」(杉田)

写真168

ステップ2 試し割の時の呼吸

「次は試し割の呼吸について、説明していきましょう。
例えば、吊るし割、飛んできた物を割る投げ割の時など、スピードを要する時は息を吸って行なっていました。(写真169〜170は、不安定な状態の瓦を吸いながら、割った例)
私の個人的な意見ですが、奥歯を噛み締めることができる気がします。
逆に据え置き割など、固定してある程度大きなものを割るときは、気合が出た気がするので息を吐いていました」(杉田)

写真169 写真170

ステップ3 呼吸でコントロール

「コントロールして突きを止める時は、拳を捻る力を使うので、結果的に息を吐く(気合を入れる)方が自然となります(写真171〜172参照)
相手を受け取る際は、相手を受け入れるのであるから、息は吸う場合が多かったですね。
それによって、反撃時のコントロールがしやすくなる、と私は考えています」(杉田)

写真171 写真172

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11.歩きで単調な運足を変える

運足は無限だ。ここでは、運足の基本=歩くことから、相手に気づかれぬ足運びへと話を進めていこう。

ステップ1 ほろ酔い加減のおじさん

相手の反応が遅れてくれるのは、等速的な動きである。
まず自分の身体(下丹田)が同じ速度で動き、足が後から着いてくるようなイメージで歩く(写真173〜176参照)
「皆さんが、現在普通に歩いているような手を振って、地面を蹴って歩く(写真177〜178参照)ものとは違います。
掌で棒を立て、バランスをとる遊びをしたことがあるでしょう(写真179参照)
そのバランスをわざと前方に崩し、体勢を立て直す時の足運び(写真180〜183参照)が、私の心がけている歩き方と同じです。
その歩き方で手を振らず、ゆっくり歩くと、疲れたおじさんが、ほろ酔い加減でとぼとぼ歩いているような感じとなります(笑)。
まずこの歩き方をマスターすることから始めて下さい」(杉田)

写真173 写真174 写真175 写真176

写真177 写真178 写真179

写真180 写真181 写真182 写真183

ステップ2 あらゆる方向にバランスを崩す

次にステップ1で行なった棒を前後左右斜めにバランスを崩して、立て直す動きを行なう(写真184〜186参照)
「ここで多分気がつくでしょうが、素早く動こうとすると、自然と膝が曲がり、腰を落としているはずです。
重い上体を落下させ、脚を軽くして、より早く動かそうとしている証拠です。
後ろ方向への動きは特に難しいですね」(杉田)

写真184 写真185 写真186

ステップ3 体を割って、間合いを盗む

構えた上体を動かさないで歩いてみよう(写真187〜192参照)
「次に身体を左右二つに分けて使う(写真193参照)=右半分が前に出たら(写真194参照)、左半分が前に出る歩き方を行なってみましょう(写真195参照)
この時、骨盤を左右に切り離し、動かすイメージを持ちましょう。
日頃からこのような歩き方をしていれば、確実に足運びの質が変わってきます」(杉田)
また身体を左右二つに分けて使うことができれば、上体を落下&脚が浮く。
すると左右のどちらか一方を前に、残りを後ろに同時に動かすことも可能となり、スイッチも容易となる(写真196〜198参照)

写真187 写真188 写真189 写真190 写真191 写真192

写真193 写真194 写真195

写真196 写真197 写真198

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12.相手を追い込む間合い

間合いほど説明し難いものはない。相手によっても、自分の得意技によっても千差万別。まずは基本的なことを頭に叩き込もう!

ステップ1 自分から近く、相手から遠い

基本的には自分から近く、相手から遠い位置を取る(写真199〜200参照)
相構えの場合は、相手は前手の突きから、逆突き・蹴りに入るケースが多い(写真201〜203参照)
そうした選手に対する場合、相手の逆突き・後ろの蹴りが効力を発揮しないポジションに移動する(前出の写真200のポジション)。
相手が逆構えの時も同じ理由で、前手を用いて、外側を取るのが基本となるが(写真204参照)、相手も同じことをしようとする(写真205参照)
「しかし、肝心なのは後ろの手であり、相手の中心(下丹田or中丹田)を取っていくこと(写真206〜207参照)。これにより、結果的に相手の外側をとることになる。
つまり、“自分から近く、相手から遠い”状況を作り出すことができるのです」(杉田)

写真199 写真200

写真201 写真202 写真203

写真204 写真205

写真206 写真207

ステップ2 相手の追い込み方

相手を追い込む場合の間合いについて説明していこう。
ポイントは、三角形の頂点方向へ相手の体軸を動かすことだ(写真208〜210は、逆体のケース)。
すると相手は、写真211のように崩れやすい体勢となる。
相構えの時は、相手の外側に相手を追い込むように回り込むと(写真212〜213参照)、相手の体軸は三角形の頂点方向に動き(写真214参照)、その方向に動かされた瞬間 、相手は攻撃しにくくなる。
「逆構えの時、相手も外側を取ろうとします。
外側を取ろうと、後ろ足あるいは前脚を動かした時(写真215〜216参照)、体軸(下丹田)に向かって、中段蹴りを出すと(写真217参照)、相手は外へ回り込み難くなる。
この蹴りは牽制のつもりでも、実際に蹴っても有効です。
相手が動いた瞬間だと、相手は前の三角形の方向に崩れかけるので(写真218参照)、反撃をもらいにくくなります」(杉田)

写真208 写真209 写真210

写真211

写真212 写真213 写真214

写真215 写真216 写真217

写真218

ステップ3 相手の誘い方

追い込むだけでなく、誘いの間合いも学んでおこう。
カウンターの項でも述べたように、相手を嫌がらず、大好きな人だと思い、優しく相手の身体(下丹田、体軸)を受け入れる気持ちで(写真219参照)、相手との距離を測り、常に自分の有利な間合い(自分から近く相手から遠い位置)をとる。
写真220〜224のように間合いを保ちながら、スルスルと前に出ていくのも一つの戦法です。
相手の前後の三角形の位置へ(写真225〜226、227〜228参照)、自分が回りこんでも構いません」(杉田)

写真219

写真220 写真221 写真222 写真223 写真224

写真225 写真226

写真227 写真228

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13.投げ技を成功させる崩し

豪快な投げ技は、憧れの一つ。しかし、力任せに投げても成功しない。講道館で柔道も学んだプロフェッサー杉田は、投げ技も得意中の得意。“柔よく剛を制す”投げ技のコツをこっそり教えてもらった。

ステップ1 三角形の頂点に崩す

崩す方向は、三角形の頂点(写真229参照)
次の実験をすれば、すぐにコツは掴める。
相手の右手首を持って、相手の両踵を底辺とした二等辺三角形(三角形の高さは底辺から、およそ下丹田の高さに等しい)の頂点の位置に引いてみる(写真230参照)
すると、力を使わずに相手を崩すことができる(写真231〜233参照)
「逆方向にも、三角形は存在します(写真234参照)。同じように崩してあげると、相手を簡単に崩すことができます(写真235〜236参照)」(杉田)

写真229 写真230

写真231 写真232 写真233

写真234 写真235 写真236

ステップ2 二方向に崩す

一つの方向に崩そうとすると、力比べになる確率が高くなってしまい、自分が崩されてしまうこともある(写真237〜238参照)
そこで二方向に崩す一例を紹介しよう。
相手が逆突きを突いてきた(写真239〜240参照)
それを左手で受け取る意識で流しつつ(=突いてきた方向に力を逃がす)、下段払いの要領で、下方向あるいは右斜め下方向へ、相手の前腕を落として崩す(写真241〜244・245〜246参照)
「突きを流す+下段払い=二方向です。上手くいけば、両腕の力をほとんど使わずに崩すことができます」(杉田)

写真237 写真238

写真239 写真240

写真241 写真242 写真243 写真244

写真245 写真246

ステップ3 ミックスさせて崩す

ステップ1&2を瞬間的に合わせて使う投げも紹介しておこう。
まず二方向に崩す。写真247のように相手を掴んだら、左手で相手の斜め後方に崩し、右手で斜め前に崩すのだ(写真248参照)
「この時は、片手はこっちへ来てという感じ。そして、もう一つの手は反対にまだ来ないで、という感じです」(杉田)
そして、相手の体幹(下丹田)を三角形の頂点方向に崩せば(写真249〜250参照)、簡単・確実に相手を崩すことができる。
「法則さえ覚えれば、“崩し”は無限の広がりを見せます。自分にあった投げを見つけて下さい」(杉田)

写真247 写真248 写真249 写真250

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14.便利な足払いを会得する

投げの次は、相手を倒すだけでなく、次の技へのつなざや、牽制としても使える便利な足払いを習得してしまおう!

ステップ1 土踏まずで優しくくるめ!

自分の足の土踏まずで、相手のくるぶしを優しくくるむようにして(写真251参照)、相手の足の親指の方向に払う(写真252参照)
「左右均等に体重をかけて立っている人であれば、自分より10キロくらい重い人でも簡単に払うことができます。
内側から払う時も、相手のうちくるぶしを土踏まずでくるむようにして、相手の親指の方向に払って下さい(写真253〜254参照)」(杉田)

写真251 写真252

写真253 写真254

ステップ2 払うタイミングが重要!

払うタイミングは、相手の足が上がる瞬間か(写真255〜258参照)、着く瞬間の二つ(写真259〜262参照)
「練習法も紹介しておきましょう。
組み合い、前後に歩き、相手の足が着く瞬間と(写真263〜265参照)、上がる瞬間に相手のくるぶし(内くるぶし)を土踏まずでくるんで払う練習です。
でも何回も払うと、相手も嫌になるので、実際に払ってみるのは、数回に一度ぐらいにしましょう(笑)。
崩す方向は、投げの項で述べた三角形の頂点と、払った足のところ(写真266〜268参照)の二つです」(杉田)

写真255 写真256 写真257 写真258

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写真266 写真267 写真268

ステップ3 現役時代の秘密兵器

続いて、実際に相手に踏み込んでもらい、相手の足の着く瞬間に払うタイミングを身につける(写真269〜270参照)
慣れてきたら、突きの牽制などを使って、相手の足が上がる瞬間に払う練習をする(写真271〜273参照)
前者の場合は、ほとんど払った足の真下へ崩れ、後者の場合は、後ろの三角形の頂点に崩れる感じになる(写真274参照)
「組み合ったりした時は、投げではなく足払いをすること。
ここで特別サービス。私の現役時代の秘密兵器時をこっそり教えましょう」(杉田)

  1. 相手ともつれるなど間合いが接近する(写真275参照)
  2. 相手の親指を上方向にして掴む&下に引く(写真276〜277参照)
  3. すると相手は反発し、腕を上げようとする。この時に相手の掌を上にして引くと、上体の力だけで腕をあげようとする(写真278参照)。しかし、親指を上にすると、今度は下半身も使い上げようとする(写真279参照)
  4. その瞬間を見逃さず、自分の手の力を抜き、脚を払い、相手の手を真下に落として崩す(写真280〜281参照)
  5. 写真282のように自護体(腰を落として相手に投げられないようにする姿勢をとろうとする人)=脚を外に張って耐えようとする人には、内側から払ってやると、簡単に崩れる(写真283〜284参照)

写真269 写真270

写真271 写真272 写真273 写真274

写真275 写真276 写真277 写真278 写真279

写真280 写真281 写真282 写真283 写真284

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15.当たりの強さを身につけよう

技が下手でも当たりの強さで勝ってしまうこともある。逆に技が上手くても、当たりが弱くて負けてしまうこともある。当たりも一つの武器なのだ。では、どうすれば当たりが強くなるのだろうか?

当たりについての3か条

ステップ1 身体の動きを連動させるな

「足を着いてから、体を捻って突くと、自分の体(本体) の動きを一度止めてから突くことになる(写真285〜286参照)
自分の本体である身体を止めてしまうのだから、当たりの強い突きができるはずがない。
ゆえに止まらずに突くことができれば、当たりの強い突きができるはずです(写真287〜289参照)
また、大きな一つのうねりによって力を出す動作ではなく、身体をバラバラに使い、突くことができれば、至近距離からの突きでも(写真290〜292参照)、 肘を伸ばしていても(写真293〜294参照)、強い突きができます。
中段突きの項で書いたように、大切な物を拾うようなイメージで突くと、バラバラに動く手足や身体の力を、インパクトの瞬間に一致させることができます」(杉田)

写真285 写真286

写真287 写真288 写真289

写真290 写真291 写真292 写真293 写真294

ステップ2 無駄な方向に力を出すな

「空手の場合、相撲のように力を長時間、前方向へ出す必要はないと考えます。
瞬間的に向かっている方向だけ、強い当たりがあればいい。
例えば前からぶつかってきたとしましょう(写真295〜296参照)。後ろ足で踏ん張ってぶつかろうとすると、必ず足から上方への力(ベクトル)が働いてしまいます(写真297参照)
この上方への力は、無駄な力だけでなく、自分より体格の大きな相手には確実に当たり負けします」(杉田)
では、どうすればいいのか?
「力を抜いて重力を使い、自分の身体(下丹田)を相手の身体に入り込む気持ちで当たって下さい(写真298〜300参照)
好きな人の身体に自分の身体を預ける。自分の下丹田を相手の下丹田の中に入れてしまうイメージですね。
足で蹴ってぶつかっているわけではないので上方への力は働かず、さらに身体全身で相手を打つような威力が生まれます。
力を抜くことと、力が入れないことは、全く違うことを理解して下さい」(杉田)

写真295 写真296 写真297

写真298 写真299 写真300

ステップ3 受け取りながら、吹っ飛ばす

「今度はただ相手にぶつかるだけでなく、相手を吹っ飛ばしましょう。
まず相手を受け入れ、流す練習です(写真301〜303参照)
「これによって、すかされた相手は一瞬当りを弱めるか、引いてしまうことが多いですね」(杉田)
次は後ろの半身で相手を受け流し、前の半身で打ち、相手を吹っ飛ばす練習(写真304〜307参照)
「相手の動きを完全に止めてしまうと、相手が流れてくれないどころか、次の攻撃が来るので注意する。
一連の体の使い方のイメージは、小船の後ろについている艪をこぐような体の使い方ですね。受け取ってから、相手を吹き飛ばすのです(写真308〜311参照)」(杉田)

写真301 写真302 写真303

写真304 写真305 写真306 写真307

写真308 写真309 写真310 写真311

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「どうぞ皆さんも気軽に道場へ足を運んで下さい。笑顔で練習しましょう」(杉田)

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