なんでもいい。
物事が飛躍的な進歩を遂げるとしたら、それは今までの常識がひっくり返るときだ。
科学だって、現在の常識が非常識になる過程で進歩していくものだし、昨今の身体操作ブームも、タブーとされてきたアプローチがあったからこそ、さらなる熟成を見せた。
歴史においては、古い常識が打ち破られ、新たな考えが普及することもしばしば。
過去の非常識は、現在の常識へ。そして、現在の非常識は、未来の常識となっていく。
今月号は、約20年前から空手界に伝わる常識と戦い、さらなる空手の進化を模索し続けている元・全空連日本王者・杉田隆二氏を取材。
たっぷりと現在の非常識=未来の常識を教えてもらうことにした。

常識が非常識、非常識が常識となる! 身体理論バイブル2010

「民族によって、得手不得手がある。日本人に合った体の動きをしないと、スーパースターは生まれない。その一つに、下丹田の発達、力を抜いた時に仕事(体を動かす) をすることや腰の縦の回転(鍬で耕すような動作)が思い当たる」と語る杉田氏。

杉田隆二(すぎた りゅうじ)
昭和27年東京都出身。小さい頃は病弱であったが、父の勧めで10歳の頃から講道館柔道に入門。18歳の頃、近所にあった日本空手道玄制流武徳会に入門。卓越した土佐邦彦氏の指導により、才能を開花させ、めきめきと頭角を現していく。26歳のときに第6回全空連全日本(L級)を制覇。野性味溢れる風貌に似合わなず(?)理論肌で理系の視点から、空手を研究。全日本空手道連盟教士6段・国際玄制流空手道連盟 武徳会7段・日本体育協会公認空手道上級コーチ・全国組手審判員。


今日の非常識は、明日の常識

 常識は、一定ではない。
 時代の流れに伴い、移ろうものだ。
 つまり現在の常識は、未来の非常識になり、今日の非常識は明日の常識に変わる可能性がある。

 だが、恐れを抱く必要はない。
 人類が成し遂げた進歩や新発見は、現在の常識を疑うことから始まった。そして結果的に常識を塗り替えることで成し遂げられている。
 空手も例外ではない。秘密裏に伝承されていた武術はタブーを破り、学校教育として体育化された。「競技化は不可能」と言われながらも、スタイルが確立され、世界に広まった。
 そして、今もなお時代が求める空手の役割を果たそうと、進化と模索を繰り返している。

 では、未来の技術の常識とは、いかなるものになるのか?
 その答えを模索しているとき、数ページの資料を手に入れた。そこには今まで様々なメディアで公開され、一般的に成りつつある身体理論が半分。残り半分には、今でも非常識とされている身体理論が記されていた。
 データ作成者の名前を確認する。

 杉田隆二――――。元・全空連全日本王者。空手を理系ならではの独自の視点で研究。達人の動き、理想の動きを分析・解明しようと試みる人物だ。

 早速、杉田氏にコンタクトを取ると、次の答えが返ってきた。
「10月29日(日曜日)に、福井県立武道館が主催する平成18年度資質向上研修会(空手道の部)が開催され、その講師を務めることとなった。そこでならば、取材に応じることができる―――」
 急遽、取材班は機上の人となった。

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動く歩道に乗る男?

 平成18年度資質向上研修会当日――。
 午前9時。JR福井駅から、繋がった緑の山並みを眺め、車を走ること15分余り。
 朝日に照らされる壮大な建物が見えてきた。入り母屋造りの屋根に白壁。まるで武家屋敷だ。
 福井県立武道館は、柔道棟、剣道棟、相撲・多種目競技棟、管理棟の4棟からなる本館と、弓道場および合宿所で構成。柔道・剣道・相撲・弓道は、それぞれ独立した専用公式試合場を有している。さらに柔道・剣道は小道場、相撲は練習場が併設されているなどの充実ぶり。さすがは「北陸で一番!」と言われた施設である。

 車を滑り込ませると、身長183センチのがっしりとした人物が目に飛び込んできた。
 杉田隆二氏である。その体には、柔軟かつ弾力に富んだ力が漲っていた。
 挨拶を済ませ、後に続いて玄関へと向かう。
 数メートル進んだところで、前を進む杉田氏の背中に違和感を覚えた。大きな背中が動かず、“動く歩道”に乗っているかのように、前へと移動していく。丹田から引っ張られるようにすぅーっと歩いていくのだ。
 その歩き方には、いかなる未来の常識が隠されているのか。興味津々で、9時半から始まった講義に臨んだ。

 講義の内容は、杉田氏の考える空手理論の概要および、本日行われる技術の内容。
 しかし、ここで問題が発生した。「落下速度の・・・」「摩擦による損失がなければ、mgh(位置エネルギー)=mα(運動エネルギー)・・・」
 ?? 頭が悪いせいか、理系ならでは説明についていけない。
 懸命にメモを取るが、だんだん文字が意味を成さなくなってくる。正確に言えば、ただの落書きだ。開始25分でボールペンを放り投げ、諦める。

 しかし、一つだけ分かったことがある。
 杉田氏は、「何となく・・・、こんな感じ・・・」が大嫌い。理路整然と空手理論を構築する理系理論家である。が、実は感性と現場主義の人であり、現場で得た閃きを実証し、多くの人に理解してもらうために、理系的な観点から、アプローチしていることだ。
 杉田氏も「公式や教室内だけでは、説明はできない」と断言する。
 ならば、この後の道場における技術研修が勝負になる。
 取材班は、安堵と共にゆっくりと目を閉じた。

今回、平成18年度資質向上研修会

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その一、構え

 では実技に見ていこう。
(セミナーでは、時間の関係上説明できなかった部分は、後日追加取材し、補足・再構成した)

 まずは、構えだ。
「構えで大切なのは、リラックスです。無駄に力が入ったガチガチの構えでは(写真1参照)、インパクトの瞬間に力を集中することができないからです」(杉田)

 しかし、頭では分かっていても、相手と対峙したときに、写真2のようにリラックスすることは、なかなか難しい。
 恐怖感も、その原因の一つだ。

「空手の場合、相手は攻撃をしてくるであろうという前提がある。そこから生まれる恐怖感は、一番体に緊張を強いるものです。
 ゆえに恐怖感が起こりにくい(心)構えが求められます。
 では、今から恐怖感を克服する構えのポイントを紹介していきましょう」(杉田)

1.的を小さくする

 自分の体が相手から見て、細く小さく感じられる方が、攻撃されにくい。
 ゆえに“的を小さくする”ことを心がける。
 具体的な方法は、次の通りだ。

「自分の両手を伸ばして六尺棒をもち(写真3参照)、それに隠れるように構えてみましょう(写真4参照)。それだけで、相手から見れば攻撃しにくい構えとなります」(杉田)

2.仕掛けるときは、小→大へ

 技を仕掛けようとする時に、相手から見て自分の体が大きく見える。ドキッとする構えを目指す。
 具体的な方法は、1の棒に隠れた構えから、胸を開き=肩胛骨を寄せて(写真5〜6参照)、相手に気づかれないように&入っていく。

 そのため、速く動く必要はない(逆に相手に分ってしまう)。
「原則としては、相手の手の届かない位置で胸をニュートラルに戻すように(肩胛骨を寄せながら)開く。
そしてスゥーという感じで膝を抜いて、入っていきましょう(写真7〜9参照)
(正中線の)動きが、等速的(同じ速度)だと、相手に気づかれず、側まで行くことができます。そして、気がついたときは、時すでに遅し。ああ、こんな近くまで来ていたのか、と相手は驚くことでしょう」(杉田)

 さらに胸を開く出方は、別の使い道があるという。
「攻撃が届かないポジションで相手が分かるようにこれをやると、反応してきますので、相手の攻撃意図を察知できることがあります」(杉田)

 相手が驚き下がった場合は、そのまま仕留めればいい。しかし、相手がカウンターを狙っている場合は、極端に胸を開くとやられてしまう。そのため、写真10〜11のように隠れた棒ごと(イメージ)、相手にぶつかっていくように入っていく。
「緊張のあまり、肩に力が入る人は、口角を上げ、笑顔を作りましょう(写真12参照)。先輩に怒られてしまうかも知れませんが(笑)、肩の力が抜けてくるはずです。

 また、上級者向けに一言。肩胛骨を開き気味にして=体を前後に割って、相手の中に入っていくと(写真13〜14参照)、相手はあたかも自分の体の中に入られてしまったと感じ、恐怖感を抱きます(写真15〜17参照)。 微妙な変化ですが、大きな差を生むことができます」(杉田)

杉田MEMO

正中線と体軸の違いについて、述べる。
 私が考える正中線とは、下丹田に関係している。写真18のように常に真っ直ぐで下丹田を通る線のことだ。
 つまり、体を前傾しようが、寝ていようが、(写真19参照)、常に垂直に立っているのが正中線である。

 “正中線を守る(=保つ)”とは、この線及びそこから派生する動きを守ることである。

 それに対し、体軸とは、文字どおり体の中心を通る軸である(写真20参照)。しかし、中心が立ち方によって変わってしまう(写真21参照)

 また、体の傾きや、伸縮によって傾けることも(写真22参照)、伸縮することもできるものである(一本の棒のように固まった物ではない)。

 組手においては、固い一本の棒ではなく、ひもである。
 そして、自分のイメージにより、体の外にも出せる(写真23〜24参照)ものだ。
(体軸を限りなく縮めて、体の外に出すイメージになれば、あたかも下丹田を外に出すようなイメージになる)

3.どちらかの手は、必ず上段へ

 通常、中段より上段への攻撃に対し、人は恐怖感を抱く。初心者は少なくとも片手だけでも、顎をカバーする位置に持ってくる。
「前手でカバーするより、後手でカバーした方が(写真25参照)、肩や上腕の筋肉をリラックスしやすく、口伝(後述参照)の〈後ろの手で受け、前の手で攻撃する(写真26〜29参照)〉というのにも合致しています」(杉田)

4.自分の構えを見つける

 最初は基本に忠実であること。しかし、上級者ともなれば、その人によって構えは違ってもよい。100人いれば、100通りの構えがあってもよいのだ。

 大切なのは、一番恐怖感を感じにくく、そして体の力が抜けてリラックスできる構えであること。
 またその状況に応じて、構えを微調整できる力を養うことも学ぼう。

5.相構え&逆構えの場合

◆相構えのとき

 自分の身体の後半分を前に出したと仮定する(写真30〜31参照/腰を含めた半分の身体を切って、動かす事がポイント)。
 下丹田から始まっているイメージを持った後ろの手を伸ばした場合(=構えの延長線上)、相手の前手を押していったら、後ろの手にぶつかるように構える(写真32〜34参照)

◆逆構えのとき

 ほとんどの人が前の手で外側を取ろうとするが(写真35〜36参照)、重要なのは自分の後ろの手で(下丹田から手が生えているイメージを持ちながら)、相手の中心(体軸及び下丹田)を抑えるようなイメージで構えることだ(写真37〜39参照)

口伝『構えあって構えなし』

 上級者になれば「こういう風に構えよう」という意識がなくなり、その人が一番、恐怖感を感じない&リラックスした動きができる構えに自然となってくる。 体の向き、手の位置、足の位置などを意識しなくても、ピッタリと整ってくるのだ。

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その二、間合いについて

1.自分のバリアを知る

 次は空手を含む武道で最も大切な要素の一つに上げられる“間合い”について述べていこう。
 間合いとは、一般的に相手との距離・空間を指す。
 相手との距離感が狂えば、突きや蹴りが届かないし、相手の攻撃も受けやすい。
 その他にも、時間的・心理的な間合いも存在し、これは自分と相手の虚実が大きく関係してくる。
 ここでは、距離的な間合いについて、論じていこう。

「まず間合いを考える前に、自分のバリア(パーソナル・スペース)が意識できるかが、ポイントとなります。
 一番感じやすいバリアは、立っている時にバランスをとるバリアだと思います。
 実際にやってみて下さい。
 人間は自然と写真40〜41のようにこれ以上、体を傾けると倒れてしまう限界の位置を知っています(写真42は限界を超え倒れた例)。
 その架空の壁みたいなものが、一つのバリアであると思います」(杉田)

 組手におけるバリアの位置は、足を動かさなくても、手足が届く位置にあると杉田氏は語る(写真43参照)。この距離が、自分の間合いの基本的な距離となる。

2.組手における両者のバリア

 組手では、相手のバリアの範囲が狭まり(=自分の体軸に近くなり)、逆にこちらのバリアができるだけ広くなる(=自分の体軸から遠いところにバリアがある)ほうが、試合を有利に運ぶことができる。
 そのため、間合いの感覚を磨き、相手をコントロールすることを学ばなくてはならない。

「相手のバリアが一番近くなる基本的な方向は、2つ。相手の足(土踏まず or 踵)を底辺とした正三角形の頂点から底辺に下ろした垂直の方向です(写真44〜45参照)
 その方向=バリアが消えるような位置(写真46〜47参照)に相手の体軸(下丹田)を動かしつつ、攻撃することが理想となります(写真48〜51参照)
 攻撃する場合は、ポジションだけでなく、左右の足の脱力によって、自分の下丹田を、相手の下丹田目がけて、直線的にぶつけることが求められる場合があります(写真52参照)」(杉田)

3.相手を三角形の頂点に動かす

 相構えの時は、相手の外に回るように動き(写真53〜54参照)、こちらの動きに合わせて、相手が前足を開き動いた瞬間に入ると(写真55〜57参照)、 相手は前方の三角形の頂点に崩れやすい。
 また蹴りの牽制(実際に蹴っても可)をしてもかまいません(写真58参照)。相手が受けようとすると前の三角形、下がろうとすると後ろの三角形に相手が崩れやすくなり、反撃されにくい角度から入ることができるようになります(写真59〜60参照)

 逆構えのときも同様に、相手の外に回るようにし、相手が前足を動かした時に入っていく(写真61〜63参照)
 また後ろ足で蹴りの牽制を行うと(写真64〜65参照)、相手は前に崩れた体勢を戻そうとして、後ろの頂点に崩れやすくなります(写真66〜67参照)
こうなれば、相手のバリアは限りなく小さくなります。

 さらに相手が後ろ足を動かした時、“その1 構え―5”の項で述べた相&逆構えのコツができていて、さらに逆突きを放つことができれば(写真68〜71参照)、 プレッシャーをかけられるので、試合を有利に運ぶことができます」(杉田)

4.近間を知る&カウンターの極意

 自分のバリア内に相手を置いて、相手のバリアの外に自分の身を置くことを“近間”と称する。簡単に言えば、自分の攻撃は当たるが、相手のそれは当たらないポジションのことだ(写真72参照)

「“近間”に入るには、相手の前手の外側から詰めるとよいでしょう(写真73〜75参照)
 相構えのときは、前手が邪魔に感じるでしょうが、慣れてくれば問題ないはずです。
 逆構えのときは、お互い前の手で外側を取ろうとする場合が多いですが、後ろ手で相手の体軸を押さえるように詰めていくと(写真76〜78参照)、近間の間合いまで達することができます」(杉田)

 急ぐことなく、気持ちはニュートラルの状態を保つこと。

「少なくとも受け取る気持ちで入りましょう。そして、この間合いに入ることができたら、躊躇せずに技を出すことが肝心です。
 また一歩歩いた時にも(ここで使われる“歩く”とは、通常のそれとは異なる=来月号・その八 歩き参照)、近間に入ることができます(写真79〜81参照)」(杉田)

杉田MEMO

 恐怖感こそが一番の敵だ。体に力が入り、気持ちも内向的になりやすい。そのため、全ての方向のバリアは狭くなる。もちろん、体自体もガチガチになるわけだから 、動き自体も小さくなり、遅くなる。
 気持ちも、力も抜き、ニュートラルな気持ちでいるのが一番良い(自然に立っているときが、一番バリアが広くなっている)。
 言葉で表現するのは難しいが、10センチ幅の道を歩くとしよう。平地では誰でもバランスを崩さず歩けるが、地上100メートルの高さでは、平地のように歩くことはできない。
バリアが狭くなってしまっている証拠である。

 相手のバリアが一番狭くなる気持ちは、相手が守ろうとする気持ちが、攻めようとする気持ちに切り替わった瞬間である。この時は、 前後のバリアが狭くなり、固まってしまったように感じることがある。

 また攻めようという気持ちが強くなると、前方向のバリアは広くなるが、逆に後ろ方向のバリアは狭くなる。そのため、前方向への気持ちが強いときは、“受け取る”ことが難しくなるので、注意が必要だ。
 “受け取る”ときは、一般的に言われている受け(相手の攻撃を払ったり、打ったりしようとする気持ち)の気持ちだと、前のバリアが狭くなり、相手に間合いを楽に詰められてしまう。

 ゆえに相手の攻撃をキャッチボールする時のように、手を前に出して、ショックを吸収するように手前に引いて“受け取る”ことが大切だ。 その結果、前方向も、後ろ方向もバリアを広くとることができる。

 ただ前後のバリアは広くなるが、横のバリアは狭くなるようである。相手の横の揺さぶりにも弱くなる。しかし、現在の試合組手では、 試合場も狭く、横への動きは小さい。また、コーナーを上手に使えば、十分に対応できる。
 自分から間合いをつめるときは(相手も横に動いても)、相手の下丹田と自分の下丹田を結ぶような気持ちを持つ。

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その三、異なる突きを学ぶ

1.結果的に捻れてしまうのが突き

「構えと間合いのコツを掴んだと仮定して、今度は、空手の代表的な攻撃技=突きについて、説明していきましょう。
 しかし、私が今から教える突きは、今までのそれとは異なります。
 私の突きは、意識的に“捻る”のではなく、結果的に“捻れてしまう”のです」(杉田)

 実際に体験してみよう。
 八字立ち(写真82参照)から、突いてみる。
 中丹田(下丹田)の力を伝えるために、脇に引いて、肩胛骨を後ろに引くように構える(写真83参照)。この時、手の甲を下に向けた方が、 前腕及び上腕等に力が入らず、リラックスできる(逆に写真84のように構えると無駄な力が入り、動作が滞る。)
 後はこの位置から腕を伸ばすだけ(写真85〜89参照)。中丹田から腕が始まっている感覚で突くことが大切だ(写真90〜91参照)

「腕を伸ばしていけばいくほど、手の甲をほぼ上に向けた方が、力が抜け、突きが出しやすくなります(そのため、近い間合いの時は裏突きとなります)。
 構えた位置から、肘を外に出さないように突くこと。肘を外に出す突きは(写真92参照)、一見速く見えますが、肘が動いた時点で突きが始まっているので、 かえって遅くなるので注意しましょう。

 また突く時は人差し指、引く時は薬指を意識すると、肘が外にまわらなくなり、その結果スピードが増します。
 人差し指はその名の通り、他人を指し示す指です。この指を意識する事により、肘がしまったまま、伸筋を使うことができます。
 逆に薬指は、薬をすくってなめたり、薬を水にといたりする時に使う指。つまり、手前に引く動作です。だから、突く時は人差し指、引く時は薬指を意識すると、 自然にスピードが増し、脇の締まった突きになるのです。

 余談となりますが、試合ではアピールするために、引き手をとりますが、実際は手が顔より後にくることはありません。使い分けることを心がけましょう」(杉田)

2.脱力の練習

「次に突きを速くするために必要な脱力を覚えましょう。
 道具である腕を軽くする練習と言い換えることができます(腕はパワーの源ではない)。
 八字立ちから、体(中&下丹田)を落下させながら、突く練習を行います(写真93〜96参照)
 写真97〜98のように下丹田を落としながら物を支えていると、物の重さを感じなくなります。
 このように胸や腕の重さを感じなくなったら、突きの速度が増し始めます。

 最終的な立ち方は、騎馬立ち(四股立ち)となります(写真99〜100参照)
しかし、ガチガチの騎馬立ちではなく、自然に立った時と同じ感覚になる感じです。
 この四股立ちあるいは騎馬立ちに関してですが、腰を低くしていくと、楽にできる膝の角度を見つけることができるはずです。
(ここで言う、四股立ち、騎馬立ちは全空連に規定をされている立ち方ではない。膝の角度は百人いたら、百通りあってよい)

 つまり楽に立っている状態(力が抜けている感覚の立ち方/骨で立っている感覚の状態)から、腰(中&下丹田)を落として突き、 楽な立ち方(=力の抜けた骨で立っている感覚の騎馬立ち)になればよいのです。

3.中心から近いところで動かす

「重いものでも落下している時は、重さを感じません(前出/写真97〜98参照)。
 2の練習で感覚・コツがつかめたら、次は限りなく中心(中丹田・写真101参照)に近い部位で、腕を動かしましょう。

 胸の中心=身体を前後に切って、道具である腕&手を動かすのです。
 胸から腕が始まっている意識を持ち、中&下丹田から動かすことができれば、最初から速く、捉えにくいスピードで突くことが可能となります。
 逆に筋力で突きを出すと、出たしが遅く、手が伸び切る寸前が速くなります。

 また中丹田を中心に身体を前後に切る突きは、腕を伸ばした状態からでも(写真102〜104参照)、近い間合いからでも威力を出すことができます(写真105〜107参照)」(杉田)

4.体は捻るのではなく、前後に使う

 掌を前にする位置から構えるか、トレイを持つような位置で構え(写真108参照)写真109のように立つ。そこから、両手突きを行う(写真110参照)
「ここでは、体を左右二つに分けて使う感覚を学びます。

 体を捻ると(写真111参照)、手を同時に出せず、強い両手突きはできません。あくまでも左右バラバラですので、体を捻らず、前後に使うと、強い突きを放つことができます。
 自由に構えた姿勢から、頭が動かないように遠くへ手を出しましょう。
 慣れてきたら、落下&突きに合わせて、膝や腰が自然と前後に動くよう心がけて下さい」(杉田)

 両手突きができたら、タイミングを少しずらし、連突きも行う(写真112〜117参照)

「この連突きはいわゆる『イチ・ニ』のタイミングでは出さず、あくまでもでも両手突きと同じく『イチ』のタイミングで行う」(杉田)

杉田MEMO

 突きはサンドバッグのようなものを突くより、何も物を突かない方がエネルギーを使うという説がある。
 しかし、これは突きを止めるために突く動作の拮抗筋が、物を実際に突くより圧倒的に働くからである。

 実際に相手を倒すなら、線で捉えることを心がける。拮抗筋を働かせない様にすることがベストだ。蹴りも同様である。
 しかし、自分の攻撃が100パーセント当たるわけではない。当たらなかった時の為には止める動作も必要であろう。この時、 止まる動作を、いかにエネルギーを使わないようにするか、考える必要がある。

 その答えは、下丹田から始まった手足を、できるだけ力を抜いて技を出し、できるだけ中心に近い所で、自分の体をコントロールすることだ。

5.肩胛骨の延長線上に、上腕を置く

「力を生み出す方法はたくさんあるが、平たい肩胛骨の延長線上に、上腕が一直線上に並ぶと(写真118〜119参照)、 大きな力を出すことができます」(杉田)

 実際に実験してみよう。
 この状態で相手から押してもらうのだ。
 肩胛骨の延長線上に上腕が一直線に並んでいると、写真120のように耐えることができるが、少しでもずれると相手に押されてしまう(写真121参照)

 これを踏まえながら、突くと威力が増す。肩胛骨を柔らかく使い、中丹田から腕が始まっている感覚で突くと、一直線になりやすいそうだ。
写真122の状態から、膝を抜き、体を前後に切って、出していくと、騎馬立ち(四股立ち)のようになっていきます(写真123〜124参照)

 こうして考えると、沖縄の実戦名人と言われた本部朝基(1870年〜1944年)も、騎馬立ち(四股立ち)&真半身に近い体勢で突きを入れた話もあながち伝説ではないのかも知れません」(杉田)

6.バランスを崩さない突き

 肩の力を完全に抜き、下丹田から手が始まっている&肩胛骨の動きで腕を投げ出す感覚で突きを行うと、相手に受けられても、腕だけは外されるが、体全体のバランスを崩すことなく、 攻撃を続けることができる(写真125〜126参照)
 逆に、この時にわずかでも肩に力が入っていると、受けられた時、体のバランスを崩し(写真127〜128参照)結果的に二本目の突きが弱く・遅くなり、相手に主導権を奪われてしまう。

口伝『“殴る”のではなく“突く”』

 突くとは、棒を持って突くのと同じで、体を捻っては突けない。
 つまり、突きという動作も、体を捻ってしまっては突きではなくなる。

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その四、“腰を落とせ”の真実

1.浮き身を学ぶ

「空手に限らず、対人を想定した武道は、状況に合わせて、流れる水の如く移動・変化し、相手を打つことが一つの理想です。
 そこで、今回から動きながら、突く練習をしましょう。
 しかし、私が言う“動きながら”は皆さんの想像するそれとは異なります。
 落ちた瞬間に攻防ができるような=浮く感覚が求められます。

 ここでは〈その三 突き〉で身につけた体・腰(中&下丹田)を落としながら、突く練習をしましょう。
 力を抜いて動く事ができれば、他の動作も同時に行うことができます。
 スポーツの連動した動作とは、まるで違う動きが可能となるのです。

 また「“腰を落とす”という言葉の意味は、上(高所)にあるものを下(低所)に移動する現象を指します(=腰を低くすることとは異なる)。
 落ちながら、作業する=浮いている状態で何かをすると言い換えることができます」(杉田)

 では実際に落ちながら、突きを行う練習へと移っていこう。

運動量保存の法則とは?

 運動量保存の法則とは、運動量は外から力が加わらない限り、いつまでも保存され、複数の物体が互いに力を及ぼし合っているとき、 または力を及ぼし合う前後においてそれらの運動量の和は、常に一定に保たれるという法則のこと。

杉田MEMO

 重たい頭を含めた上体が急速に落下させると、足(下肢)の脱力ができていれば、その部分は上方向に浮くことになる。

2.横に動きながら、浮く

下丹田を落とすと同時に、インエッジで立つ(写真129参照)。そして移動する方向の足を浮かせると(写真130〜131参照)、 筋力を使わなくても、自然と横へ移動することができる(写真132〜133参照)。蹴らない&筋力を使って、脚を上げないことを心がけ、左右行う。

 次は前出の動き=横に浮きながら、手を前に構えて、突きを出す(写真134〜138参照)。体を落下させると同時に突きを出す。
 できるようになったら、横に浮きながら、連突き(写真139〜142参照)
 落とした瞬間に二本突くこと。移動する方向と反対の足も脱力し、最初の一本突くことを心がける。移動する方向の足が着いた瞬間に、 その足の脱力で、もう一本突く。

「初動作は、真下に腰を落とすイメージで行うようにする。動く方向に体(特に上体)を倒してはいけません。
 上級者になれば、重力を用い、丹田を落下させた後、再び浮かすこともできるはずです」(杉田)

口伝『沈身の先に、浮き身がある』

 腰を急激に落とすことにより、足が浮く感覚になる。落ちながら、作業する=浮いている状態で何かをすることが、真に腰を落とすことである。

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その五、縦への移動に変換

1.移動にあわせて、突きを放つ

 今度は、その四で学んだ“落下しながら、動く”を縦の移動に変換していく。
 その四で学んだ横の移動での突きを、縦方向に変換するだけである。

「インエッジ(=土踏まず)で立つ感覚が身に付いていることが前提となります。
 インエッジ(=土踏まず)を使った縦の動きを身につけると、自分の前に立つ相手から見て、速い動きが可能となります」(杉田)

 初歩的な練習方法は、前後ら(写真143〜145参照)→前後ろ(写真146〜147参照)→前々(写真148〜151参照)のステップを行う。

「最後の前々の入り方の時、インエッジを用い(写真150〜151参照)、下丹田が止まらないように&等速で動くことが重要です。この練習をやっていると、 後ろ足で蹴る癖がなくなってきます。
 できるようになったら、スイッチステップで後ろになった足を着地と同時に脱力して、前に出てみましょう(写真152〜155参照)
 蹴るのではなく(写真156参照)、あくまでもインエッジ&脱力で前足を浮かせて、前に出て下さい。

 ここで言う"脱力”とは、スイッチした瞬間に立とうとしないで、そのまま脚を脱力させることです。このスイッチステップは、体のバランス感覚を養うのにも適した練習です」(杉田)

 後ろ足の脱力ができない人は、最初は筋力でジャンプしてもかまわない(写真157〜160参照)

2.前足と前手、体を一致させる

 1の動きに慣れてきたら、腰を落とした瞬間に前の突きと前足を同時に出し、一致させる練習を行う(写真161〜162参照)。 決して、足が先ではない(写真163〜165参照)

「一致させる具体的なイメージは、上から落ちてきた大切な物を拾う感じです(写真166〜167参照)」(杉田)

3.後ろ足を引きつけると同時に突き

 今度は、後ろ足が写真168〜170のように自然と前足に引き寄せられたところで前手を出す練習を行う。前足の脱力で突きを出す感覚だ。

「道路標識の様な物を掴んだ感覚になり、自分の体を引き寄せるイメージで行ってみましょう。言い換えると、道路標識の位置(身体の外) に体軸がある感覚ですね」(杉田)

 また写真171のように腰を捻るのではなく、中&下丹田を中心に体を前後割り、切るように動作することがポイントだ。
 後ろ足が前足を追い越してしまった場合は、“前手の逆突き”になる(写真172〜174参照)

「ここで意識することは、体を動かす動作と突く動作は、異なる動作であることです。ゆえに足がどこの位置にあっても技を出せなくてはいけません(写真175参照)
 つまり、突きを入れられる(手が届く)位置に達したら、足がどこであろうと、突けばよいことになります」(杉田)

4.できる人はやってみよう

逆突きの後(写真176〜179参照)、自然と出た左足のさらなる脱力により、後ろ足を引き付けて(自然と引き寄せられる)突き出す(写真180〜181参照)

「違う動作は、別々にも同時にもできなければなりません。
 1〜4の動作で共通することですが、突く動作と体を動かす動作は違う動作ですので、間合いを詰める時&突きの動作が始まるまでは、下丹田から上の体(特に手、腕)を 一寸たりとも動かさないことを心がけて下さい」(杉田)

 また余談となるが、遠い距離で突くときは、下丹田→中丹田→腕が繋がっているイメージで突く(外から見ると、体軸が前傾している)。

 カウンター時は、素早く打つ必要があるため、中丹田のみが腕と繋がっているイメージでもよい。
 中段突きの時は、中丹田を経由せず、下丹田と腕が直接繋がっているイメージを持って、杉田氏は動作するそうだ。

杉田MEMO

 日本人の体の使い方は、狭い場所で行う農耕民族の使い方である。
 土地を耕す時も、横回転(体を捻る)動作ではなく、縦方向の回転で鍬などを振るっていた。
 さらに補足すると、重力を使い、力を抜いた時に仕事をしていた。
 鍬で耕す時に持ち上げる時(力を入れた時)には、仕事をしておらず、力を抜いて振り下ろした時に仕事をしている。
 つまり日本人の本来、力を抜いた時に仕事(技)を出すのである。

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その六、相手に悟られず前に出る足運び

1.前足は動かさない

 達人の動きは、見た目はゆっくりでも、速い。それを実現するために、“その4の浮き身”を踏まえた上で、相手に気付かれず、前に出る練習を行う。

 その三〜五の動きをきちんと抑えていれば、すぐに身につけることができる。
 ポイントは、相手に注目されやすい前足を開いたり(写真182〜183参照)、無駄に動かさない=第一動作にならないことだ。
(ここで言う足とは、LegではなくFootのことである)

 前足から移動する時は、前足は浮かせるイメージで脱力し、後ろ足はインエッジで立ち、脱力する(写真184参照)
 そして、前へ足を出した時、前足の脱力により、後ろ足を滑らせるように前足を寄せる(写真185参照)。自然とくっついてしまう感じだ。

 骨盤を前にスライドさせるイメージで行う(道路標識を掴むイメージでもいい。各個人のイメージが掴めれば、なんでもいい)

「前蹴りなどは、蹴り足と軸足の脱力によって行うとやりやすいと思います」(杉田)

 後ろ足から後方に移動する時は、前足はインエッジで立ち、後ろ足は浮くイメージを持つ。もちろん、腰を落としながら動作する(写真186〜187参照)

「基本的な注意点は、前方向の動きと同じ=後ろ足を動かす動作が、第一動作にならないことなどですが、下丹田の回転だけが異なります(後述参照)」(杉田)

2.下丹田を転がして落とす

 突き&蹴りを出す瞬間、下丹田を真下に落とすイメージを持つ。
 そして、下丹田を落下させた時、下丹田を前方に移動させるのだ。

 例を挙げれば、下丹田を球のような物体とイメージし、その球をスキーのジャンプ台のような形のところを転がすイメージで落とすと、写真188のように下丹田は前方に回転していく感じだ。
 (足を前後に開き、インエッジで立ち、前足を浮かす感じの抜き方をすれば、自然に前に出てしまう)

「突き・蹴りとも、下丹田の前方の回転を相手に伝える方が、自然で強い技になります」(杉田)

 後方に移動する時は、下丹田も後方の回転になりがちだが(写真189参照)、それでは技が弱いものになる。まして受ける時などは、相手の力とぶつかった場合に負けてしまう(写真190参照)

 しかし、下丹田を地球ゴマ(写真191参照)で説明すると、地球ゴマそのものは後方に転がっても、中は前方に回転しているように動かすことで(写真192参照)、相手の力を流すことができる。難しいがチャレンジしてみよう。

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その七、投げ、払いのくずし

1.投げるための二つの原則

 難しい話が続いたので一段落し、投げのコツを紹介しよう。
 杉田氏は、「倒すための原則は、二つしかない」と語る。

 一つ目は、踵・土踏まずを底辺とした二等辺三角形の頂点に相手を、崩すことだ(写真193〜196参照)
 このときの三角形に高さは、床から下丹田までの距離に等しい(写真197参照)
 この三角形は、後にもある(写真198参照)

「相手の体軸の傾き等によって、多少の違いはありますが、両足の土踏まずを結んだ線上に相手の体軸があり、自然体で立っていれば、上記の二等辺三角形は、ほぼ正三角形になります」(杉田)

 もう一つの原則は、今立っている場所(脚の位置)に、脚を払うなどをして、引き落とすように崩すことだ(写真199〜202参照)

2.払いのタイミング

 今度は“払い”のタイミングだ。
 タイミングも、2種類。相手の足が上がる瞬間か(写真203〜206参照)、着く瞬間である(写真207〜209参照)。

「払うには、自分の足の土踏まずで、相手のくるぶしを包むようにすること(写真210参照)
 そして、相手の足の親指方向に、自分の足の小指側の足刀を、床を這わせるようにして刈ることです(写真211参照)」(杉田)

3.簡単に崩す方法

 試合などの競技では、柔道と違って完全に倒す必要はない。崩すだけでもよいのだ。
 簡単に崩す方法を、幾つかあげてみる。

◆もつれた時

 相手の手を縦方向にして、写真212の急所(手首から指三本くらいの位置)を写真213の部分で圧し、腕を真下に落とすようにして崩す(写真214〜215参照)

「手首の柔らかい人で、この掛け方が効かない人がたまにいる。その時は、足を刈って、真下に落としましょう(写真216〜218参照)
 手を落とされないように頑張れば頑張るほど、肩に力が入り、また踏ん張ると重心も上がってくるので、簡単に足を払うことができます」(杉田)

◆相手が下がった時&牽制

 相手の右足を自分の左足で払い崩すときは、土踏まずで前から、相手の右足に自分の左足をぶつける&押し込むようにして払う(写真219〜221参照)
相手の脚を揃えてしまう感じだ。

 相手の左足を自分の左足で払う時は、相手の斜め前から相手の左足を体の外側に向かって押し込むようにして払う(写真222〜224参照)
 この時、相手の体(下丹田)が、前方向の三角形の頂点に崩れるようにすると(写真225参照)、より効果的である。

◆相手が前に来たとき

「相手の前足を払う時は、相手の足が床に着く瞬間に、相手の足が出てくる方向に自分の土踏まずを用い、相手のくるぶしを包むように払う(写真226〜227/228〜229参照)

「この時、相手の出す――もしくは出そうとする技を受け取る気持ちで、間合いを取ること。
 自分の下丹田で相手の下丹田を受け取る気持ちになっていると(写真230参照)、楽に足払いをすることができます」(杉田)

4.足払い以外の崩し方

◆首に手を巻いて、相手を崩す

 相手を前の三角形の位置に崩す時は(写真231参照)、腕のとう骨の手首に近いところで(写真232参照)、相手の首に掛け巻き込むように崩す(写真233〜235参照)

「投げるときの肘の角度は、受けの上げ受けと同様の角度(写真236参照)でよいと思います」(杉田)

◆入り身で崩す

 柔道で言う隅落とし、谷落としの変形が一つの方法である。空手では相手を掴まないことの方が(特に競技では)多い。
 脚を相手の後ろに運び、脚と同側の腕を相手の胸あるいは腹に当て、後ろの三角形の位置に崩す(写真237〜240参照)

 この時の多くは相手が下がろうとしている場合が多いので、くずしの三角形(後)の位置は構えている時よりも、後ろに移動することになる(写真241参照)。ゆえに相手を崩す時、自分の上半身を横に振るのではなく、ほぼ前方に出す感じで行うとよい。

◆相手を受け取ってから崩す

 柔道で言う足車、膝車の変形が一つの方法である。
 柔道と違うのは、間合いが遠いので、左足でかけるなら、相手の左足にかけるようになるであろう(写真242〜247参照)

 この時、相手の首に手を掛けることができたなら(写真248参照)、手首を返して、とう骨側で三角形の頂点を崩す(写真249〜251参照)

「この時の右手の向きは、水月の高さであるならば、ほぼ手の甲が真上を向き、肘の角度は、受け上げに近い角度になります」(杉田)

次号・後編と続く

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