第六章 競技

玄制流は、武術だけでなく、競技でも活躍している。それだけ、流派の完成度が高いと言うことだ。過去に全空連全日本を制した選手(1978年・重量級・杉田隆二)もいる。そこでナショナルチームに選抜され、2000年10月に開催されたWKF世界大会に団体メンバーとして臨んだ土佐邦彦氏の長男・樹誉彦君に話を聞いた。


土佐樹誉彦◎プロフィール

1977年3月9日、埼玉県朝霞市に日本空手道玄制流武徳会・土佐邦彦会長の長男として生まれる。幼少の頃より、道衣に袖を通す。高校時代に親許を離れ、単身岩手県へ。糸東流の佐々木寛治先生の指導で才能を開花させる。大阪経済法科大学に進学後、長田義行監督のもと第53回神奈川国体重量級 準優勝・第4回アジア選手権大会80キロ超級第3位などの好成績を残す。現在は玄制流武徳会に勤務しながら、指導者を目指して修業中。



現在、玄制流の玄制流武徳会に勤務している土佐樹誉彦くん。玄制流を正しく学び、伝承するためにも、日々勉強しているという。
2000年10月、ドイツ・ミュンヘンで開催されたWKF世界大会。団体戦において日本は一回戦で姿を消すこととなったが、唯一勝利したのが、土佐樹誉彦であった。
玄制流で実際にやってみて

学んだことは?

樹誉彦 私は気がつけば、道衣に袖を通していたのですが、空手の基本以前に、人間としての基本をしっかり教えられました。
「親にはその子供を良き社会人に育てる義務がある」と父はよく言いますが、それは道場でも同じこと。まずは道場の靴の脱ぎ方から始まり、他人に迷惑をかけないこと。社会のルールを守ること。礼節をもって人に接することなどをしっかりと学びました。
たぶん、読者の皆さんがうちの道場に来て一番初めに気がつくことだと思います。

玄制流の技術は
どのようなものなのでしょう

樹誉彦 確かに中学時代までは玄制流だったのですが、高校より家を出てから多くの方々から、たくさん稽古をつけていただきました。人間に例えると、骨格は玄制流で、肉はその方たちから、と言えます。
そのため、私がここで玄制流の技術についてコメントすることは、控えさせてください。
しかし、私の少ない経験から申しますと、流派の違いはあれど、武道は古来より肌と肌を接し、目と目を見合って手を取り、足を取り伝えられてきたものであり、そこにある厳しさは変わらないと思います。そしてその厳しさの中で己を鍛え、活かしていくことが空手道の正しい取り組み方であると私は考えます。
そういう姿勢で取り組めば技術はもちろんのこと、精神面も必ず上達していくのではないでしょうか。

これからの目標は?

樹誉彦 玄制流が社会という枠の中の一組織である以上、現時点の状況や、過去の反省も踏まえて(1)どうあるべきなのか、(2)どんなことを目指すのか、(3)そのためにはどう活動しなければならないのか4そこにはどんな人間がいるのか−−といったことを社会に明確に提示していかねばならないと私は考えています。
私が多くの大会に出場する理由の一つも、皆さんに玄制流はどういう志や考えをもって活動しているのかということを知ってもらいたいからです。
また、私がナショナル・チームや、世界大会で学んだ貴重な体験を次の世代を担う子供たちに形を変え、伝えていきたいと考えています。私自身も道場に、丸谷・杉田・本橋・下園といった大先輩方(左記入賞者一覧参照)のような一流の選手がおられましたので、明確な目標設定ができましたし、「お前なら、世界大会に行けるよ」と冗談でも応援してくれたことは、私の大切な思い出です。
そのため世界大会の個人戦で優勝することが私の選手としての目標となっています。

過去の代表的な入賞者
土佐氏が自己の信念に基づき恩師と袂を分かち、その草創期から骨身に染みた玄制流空手道普及の道を選んだことは、その後の全空連発足とともに始まった種々の公認資格制度の普及という現実の前にはまさに茨の道であった。
段位審査では当然、審査員の中に玄制流の型を知る人が一人もいないと言うことであり、それは実力の有無よりも厳しいものであった。
ともあれ、昭和 年にわずかに三教場で出発した組織は次第に拡充し、現在国内は62支部、海外では11カ国59支部までになった。この間、国内外の大会で活躍した選手は数知れない。ここでは、誌面の都合上、その一部を紹介させていただく。

◎丸谷行良 1978 第3回アジア太平洋大会 団体組手優勝
1978 第6回全空連全日本 無差別級 敢闘賞
1979 第1回日仏国際親善大会 個人形3位
1980 第5回世界大会 団体組手4位
1981 第1回ワールド・ゲーム 70キロ級3位

◎杉田隆二 1978 第6回全空連全日本 無差別級 優勝
1981 第36回滋賀国体組手 重量級 4位

◎本橋照弘 1978 第6回全空連全日本 少年男子組手 3位
1985 第39回奈良国体 重量級優勝
1986 第8回世界大会 80キロ超級 4位
1987 第2回ワールド・カップ80キロ超級4位
1987 第1回日・ブラジル親善大会 80キロ超級優勝
1988 第7回アジア太平洋大会80キロ超級優勝
1989 第3回ワールド・カップ 80キロ超級準優勝
1989 第8回アジア太平洋大会 80キロ超級3位

◎今野雅 1991 第3回アジア太平洋ジュニア大会 18歳男子3位

◎福井由香 1993 全国高校総体女子組手 優勝
1993 第21回全空連全日本 女子組手 敢闘賞
1993 第1回アジア選手権53キロ級3位

◎笹有紀子 1996 第52回大阪国体 少年少女組手準優勝
1996 第3回アジアジュニア大会 16歳の部優勝
1996 全国高校総体女子組手 準優勝
1997 全国高校選抜大会 3位
1997 全国高校総体女子組手 優勝
1997 第6回日本ジュニアチーム国際体験親善大会17歳の部優勝

◎土佐樹誉彦 第53回国体(1997)重量級準優勝
第4回アジア選手権大会(1999)80キロ超級3位