第四章 蹴り



では、実際に玄制流にはどのような技があるのか、確かめてみよう。


その1 斜状蹴り

相手の斜め前方に体を伏せる。頭を地面近くに下げ、回し蹴りを放つ。狙う部位は上段、中段でもどちらでもかまわない。(写真12〜15)
相手は視界が消えるため、虚をつかれることとなる。そこにカウンターの状態で蹴りが入るため、威力は倍増だ。まさに高低差が生み出す三次元の効果である。
ちなみにこれは5つの法則でいうと「変」を使っている。

その2 海老蹴り

相手の攻撃に体し、カウンターで放つことが原則。回転すると同時に両腕をつき、全身のバネを用いて、一気に蹴りを相手に叩き込む。(写真16〜18)これもさきほどの斜状蹴りと同じく、三次元的な蹴りの一つだ。
このときのポイントは、蹴り足を引きつけるとき地面に付けないことだ。それだと2動作となり、カウンターで決まることはない。回転すると同時に一気に膝の横を通して流れるように蹴らねばならない。これも同じく「変」を使っている。

◎平面よりも、立体的な捕え方をする方が難しい。
視覚の仕組みなど、難しいことは抜きにして三次元的な効果を探ってみましょう。
もしあなたがバットでボールを打つとしましょう。まっすぐ(一次元)なボールだったら、打つのが簡単でしょう。次に2次元的な左右の動きの球が入ってくると難しくなります。もしこれが三次元的な球となったら、いきなり初心者が球を捕えるのはかなり難しいのではないでしょうか。
玄制流は頭の位置を基準にして考えてみると、特に高さの動きの幅が大きい。まるでメジャーリーグで三振を量産し続ける野茂英雄投手が投げるフォーク・ボールのように落差があります。これでは相手も動転してしまうはずです。また自分の知識から生み出される動作イメージとは異なるため、目標を失い「相手が消えて見える」といった錯覚も起こりうるのです。